今回は、月経前にだけ「うつ」になる、PMDDのお話です。
発症するのは生理のある女性のみですが、女性だけでなく、すべての男性にも知っておいてもらいたい。
身近な女性をいつ何時襲ってもおかしくない症状だからです。
実は気が付いていないだけで、既に苦しんでいる人が身近にいるかもしれません。
PMDDって何?どんな症状?
PMDDとは、生理前だけうつになる症状。
PMSという言葉を知っている方は多いかもしれません。
月経前に生じる、腹痛や頭痛・いらいらなどの様々な不快な症状のことです。月経前症候群といいます。
一方で、PMDD(月経前不快気分障害)とは、月経前にだけ「うつ」になるという症状のことです。
大体生理2週間前あたりから、抑うつ症状が出始めます。
具体的には、
・朝、身体が鉛のように重く感じ、起き上がれなくなる。
・胸に鉛を詰めたような憂うつな気分、ネガティブな気分になる。
・友人や知人と会いたくなくなり、家に引きこもっていたくなる。
・身だしなみを整えるなど、普段なら普通に出来ることができなくなる。
など。
そして、生理が始まると、これらが嘘のように治ります。
生理が来た日から、急にとても晴れやかな気分になるのです。
PMDDから本当にうつになった話
私がうつになったのは、このPMDDがきっかけでした。
PMDDを発症したのは大学時代、20代そこそこの頃。
でも始めのうちは自覚がありませんでした。
ただ、ある日突然、身体が鉛のように重くなり、ベッドから起き上がれなくなるのです。
そして、友達との連絡を一切断ち、引きこもってしまうのです。
そういう時期が来たら、携帯の電源を切り、授業に行かないこともありました。
時には自分を叱咤して、ほとんど化粧もせずに、這うように大学に出かけて行ったこともありました。
はじめは、自分が「自堕落」なだけだとばかり思っていました。
しかし、その「鉛のような期間」の気分の塞ぎ方が尋常ではないので、次第に私は、これは「うつ」の症状なのではないかと疑い始めます。
ネットで検索すると、その「心身が鉛のように重い」時期の症状は、うつの症状と何だか似ていることに気付きました。
ただひとつ違うのは、私の症状は時々現れ、数日から長くとも2週間ほどすれば治まるものでした。
一度症状が消えると人が変わったように、晴れ晴れとして軽やかな、何でもできるような気分になるのです。
「ずっと憂うつでいるわけじゃないんだし、うつなんて大げさな…」と思いましたが、やっぱり何かおかしい。
あまりに症状が定期的に来るので、次第に生理周期との関連性に気が付き始めました。
またネットで色々調べてみると、
「生理前にうつになるPMDD」という言葉が見つかりました。
その情報を見つけてからは、生理周期と精神状態が面白いほどリンクしていることがはっきりわかってきました。
ただ、その時の私は、得た情報を何にも役立てられませんでした。
時々音信不通になる私に、友達が「一体どうしたのか」と尋ねてきました。
私は、勇気を振り絞って、生理前にだけ何かおかしくなる、何もする気力がなくなるのだと明かしました。
聡明な彼女は、私の言葉を飲み込むようにしばらく黙った後、
「お母さんには相談した?」
と聞いてきました。
言っていない、と答えると、それなら相談した方がいい、と彼女は勧めてきました。
彼女のアドバイスは的確でした。
私がこの時母親に相談していれば、おそらく母は全力で私のために最善の行動を起こしてくれたでしょう。今なら分かります。
しかし当時の私は、既に物事の考え方・感じ方がゆがみ始めていました。
母親はきっと、こんなダメになってしまった自分を見放すだろう…と考えてしまいました。
PMDDは次第に私の思考を歪めていき、
やがて慢性的に無気力で憂うつな状態、「うつ病」へ発展してしまいました。
PMDDの治療とは?れっきとしたうつ病なので、生理前に抗うつ薬を飲もう
PMDD―生理前うつは、適切に治療(服薬や認知療法など)をすれば必ず良くなります。
その証拠に、私は今では生理前も整理後もほとんど変わらない精神状態で過ごせています。
しかし、「適切な治療」を受けるに至るまでが難しい。
私の場合、生理周期がかなりきちんとしていたので、症状と生理周期との関連性を早々に疑うことができました。
しかし、周期が不安定な方だと、自分がPMDDだと見抜くまでに時間がかかるだろうと思います。
(これはPMSも同様です。私の母も時折襲う片頭痛に悩まされてきましたが、数十年経ってようやくそれがPMSの症状だと気づいたそうです)
また、PMDDだと分かっても、うつの症状のせいで、他人に助けを求める気力がなくなりがちです。
うつの症状が出ているときは、
「こんな風になってしまって恥ずかしい、とても人には言えない」
「助けを求めたら迷惑に思われるに違いない」などと、認知の仕方がゆがんでしまいます。
逆にうつの症状が出ていないときは、
「まあ、一時的なものだったのだろう。今は平気だからいっか。」と見過ごされがちです。
もし親しい人に打ち明けづらい事情があるならば、 専門医のいる医療機関を訪れるのが一番良いです。
時々無気力・憂うつになる、生理が始まると治まる(とは限らず、ずるずると長引くことも時にはありますが)、調子の良い時もある、という女性の方には、
お医者さんに相談することをおすすめします。
そして、抗うつ薬を処方してもらってください。
今どき、抗うつ薬を飲んで生活している人は沢山います。
腹痛時に鎮痛剤を飲むのと同じです。
もしも、
「うつなんて自分には関係ない(と思いたい)」
「ちょっと気力が湧かない日があるだけでそんな大げさな」
「気力で何とかすべき」
「病院なんて気後れする」
などと思って、何の対処もせずにいると、大切なものを失うことになりかねません。
例えば、大切な人との関係。
―私は、うつになってから音信不通にしてしまい、それきりの友達がたくさんいます。私にあの時アドバイスしてくれた友達もです。4年くらい経った今、ようやく連絡を取り始めていますが…。
例えば、自分の幸せ。
―女性だからって、「生理前にも幸せな気分でいることはあきらめる」必要はないのです。私も治療を行い、今ではほとんど症状が出なくなりました。
例えば、自分の命。
―PMDDをこじらせると、慢性的にうつになってしまいます。まだ大丈夫、と思っていると、自覚できないまま悪化し、自殺衝動が生じ始める…という最悪の事態になりかねません。
そうなる前に、どうか対処をしてほしいのです。
私は願わくば、全ての女性に、いつの日も幸福でいてほしい。
もしも、「私には自分の幸福云々よりも大切なものがあるから、自分の幸せにかまけている暇なんてない」と思うのなら、
その大切なものを守るためには、あなたは健康な精神を維持する必要があるのだ、と考えを改めてください。
心の健康を崩せば、何もできなくなってしまうから。
女性の一生は、ホルモンバランスの揺れ動きとの戦いです。
毎月(人によっては不定期)の生理。
生理前の色々な不快感。
人によっては妊娠、出産。マタニティブルー、産後うつになるリスクもあります。
更年期。
女性は、大切なもののためにも、健康で健やかな心を保つことがとても大切なのです。
女性が幸せでいれば、彼女の周りの世界は、彼女の幸福という健やかな光を受けてさらに輝き始めます。
それでは、全ての女性の幸福を、そしてそれを見守る皆さまの幸福を願って。
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PMSの情緒不安定に効く対策はこちら→【PMS対策】イライラする自分を許す。認知療法もおすすめ