うつを治したいときはまず「心の休養」が必要です。
心を正しく休められていれば、自然と心の重荷が取れていって、活力が戻ってきます。
では、正しく「心を休める」にはどうしたらいいのか?
一言で言えば、「ストレスフリーに過ごす」ことです。

ストレスフリーに過ごす方法とは、以下の3点です。
1.「何かをしなくては」と考えない。「何もしなくていい」と考える
2. 自分の気分が良くなることをする
3. 「嫌な気分」を起こす行動を避ける
ね。簡単でしょう。
では、詳しい説明に行きましょう。
うつの療養中は、「何かすべき」と思わない。何もしなくていい。

うつ病は、
「直さなきゃ」「○○すべきなのに」「○○しなくちゃいけないのに」
などと思わないほうが、早く治ります。
何らかの義務感に追われている限り、心は休まることができないので、うつ病はなかなか治りません。
これらの義務感を捨てるには、一旦、あなたの中にあるすべての固定観念を捨てる必要があります。
うつになる時というのは、大体「何かに心を追われ続け、心が疲弊した状態」です。
私もうつになる前は常に「〇〇しなきゃ」に追われていました。
勉強しなきゃ。
活動しなきゃ。
家事しなきゃ。
私にとって、良く生きることとは「常に何か努力し続けること」だと思っていました。
「何もしなくていい」時間という概念はなかったのです。
でも、体と心は24時間努力し続けることはできません。
周りが就活する時期になって、私は今度は
「自分が何をしたいのか、何ができるのか考えなきゃ」
という思いでいっぱいでした。
しかし、既に「うつ」が始まっており、自分の能力に自信が持てず、
やりたいことといえば「山に籠もって絵を描きながらのたれ死ぬ」くらいしか思いつきませんでした。
「周りの皆は皆就職してるから、私もしなきゃいけないのに」
「大学を卒業しなくちゃいけないのに」
「家に引きこもってるんだから、せめて家族の役に立つことをしないといけないのに」
「せめて生活習慣を整えなきゃいけないのに」
など、いろいろな義務感に押しつぶされそうな日々が続きました。
その結果、うつはいつまでも良くならず、むしろ苦しみが増すばかり。
―だから、思い切ってこれらの義務感を全部捨てることにしました。
「今は療養中なんだから、何もしなくていい。むしろ何もすべきでない」
と開き直ったのです。
どうせ、「やらなきゃ」と思ったところで、出来ないんだし、と。
「何もしなくていい」と考えを変えると、将来について考えることが減りました。
そして、「今」「目の前のこと」に意識が向くようになりました。
コーヒーの香り。
窓から射し込む日射し。
そういったものを、より強く、深く感じるようになりました。
そして、それまでずっと私の心に巣食っていたざわざわとした波が凪いでいくのを感じました。
「べき」とか「やらなきゃ」に追われない時間って、こんなに穏やかなものなのか。そう初めて知ったのです。
「将来に備えないといけない」とか「将来のために考えておかないと」と言いますが、
いざその「将来」がやってきたところで、
「“今”の幸せ」の感じ方を知らないと、幸せな気分を味わうことはできないのです。
私は、この「べき」とか「やらなきゃ」をなくす心がけを、うつが治った今も続けています。
仕事中もそれ以外でも、本当に必要なこと以外は「やらなきゃ」という観念を持たないようにしています。
そして、やらないといけないことを思いついたら「すぐに」行動して片付けて、出来るだけ「やらなきゃ」と思う時間を短くしています。
(うつ病のときはこの「すぐに」は難しいので、無理して行おうとしなくて大丈夫です。)
このおかげで、「今、目の前の幸せ」に存分に浸ることができ、かなり心穏やかに過ごせています。
気分が「楽」「穏やか」「幸せ」になる行動を選ぶ
心の休養で2つ目に心がけることは、
「自分の気分が楽(穏やか)になることをする」ということです。
もし「何もしない」ことが一番楽なら、「何もしない」ということをする、ということです。
行動したくないときは、「行動しない」ことを積極的に選んで良いのです。
朝起きるのがしんどくて、寝ている方が気分が楽なら、寝ることを選ぶ。
やりたいこと、好きなことがあれば好きなだけやる。
そして、やったあとで後悔しないこと。
好きなだけ寝ても、「寝ちゃった…」と後で後悔して苦しんだりは全くしなくていいです。
うつの治療には「心の休養」が必要。
気が済むまで、思う存分にゴロゴロ、ダラダラしなくてはならないのです。
好きなだけゲームするもよし。漫画読むもよし。アニメ見るもよし。
あまり頭を使わずにできる娯楽が最適です。
私はひたすら動画サイトで動画を見ていました。
ちょっと見すぎて「ネット依存症(動画サイト依存症?)」になりかけたので、ひとつのことをやりすぎない方がいいかもしれません。
何にしても、うつが治れば生活習慣なんて勝手に整うし、
色んなことをする気力も戻ってきます。
だから、気力が戻ってくるまでは罪悪感なく「のーーーんびり」しましょう。
あとは、もし、家族が一緒に住んでいる場合などで、
「なまけているんじゃないの?」というようなことを言ってくる場合。
あなたはなまけていません。断言します。
あなたは療養しているのです。
だから、そういった声も、全く気にする必要はないのですが、
家族はただ誤解をしているだけの可能性もあります。
もし話が通じる相手であれば、
「何かをしなくてはならないという義務感が、うつ病の症状をとても悪化させるから、今は休んでいるんだ」
と説明してあげてください。
もしくは、お医者さんに行って、「先生に休養をとるように言われたから」と家族に伝えてもいいかもしれません。
「嫌な気分」をもたらすことはしない
うつの治療中は、できるだけ「負の感情」を起こさないことが大事です。
負の感情とは、悲しみ、寂しさ、虚しさ、恐怖、怒り、妬ましさなどの「不快」な気分全般のことです。
これらを避けるためには、
「やりたくない」ことは徹底的にやらない。
もう、これを徹底してください。
たとえ、一般的には「やるべき」とされていることでも、病気のときはしなくていいんです。治療だから。
例えば、私の場合、
友達から「生きてる?」とメッセージが来ても無視して、返信しませんでした。
友達と交流することに恐怖感があったので、それを避けるためです。
SNSも見なくなりました。
自分の現状に対する虚しさが募るからです。
新聞も読まなくなりました。
悲しい事件を目にすると傷つくからです。
朝起きてリビングに行くのもやめました。
仕事に行く家族を見ると、自分が情けなくなって悲しくなるからです。
そして、「やらない」と決めたことに対して、
「本当はやらなきゃいけないのに」という思いも捨てました。
そうすると、心が軽い軽い。
「すべては治療のため」と思えば、悪い気もしません。
したくないことはしない方が心が休まって早く治るし、
うつが治ると、あんなにやりたくなかったことを、不思議としたくなってきます。自然と。
ただ、気をつけるべきは「本当にやりたくないこと」と「何となく気が乗らないだけのこと」の区別です。
やってみる前はすごく気が重くても、やってみると意外と大したことなかった、むしろ気分がスッキリした、ということもあります。
例えば掃除、買い出しなどのちょっとした用事、散歩などです。
こういう「気は乗らないけど、やったらスッキリしそう」なことは、やってみるのがおすすめです。
もし行動することに「恐怖」や「不安」を感じるなら、やろうとしなくていいですが、
「ただ気が重いだけ」なら、思い切って少しずつ行動するようにしてみると、
徐々に行動力がついて回復に向かっていきます。
あと、「ネットを見ること」は別に避けなくてもいいのですが、
見境なくやみくもにネットサーフィンするのは、危険なのでやめておくのをおすすめします。
見るサイト・コンテンツを厳選し、「何が書いてあるか予測できない場所」は見て回らない、と決めておきましょう。
なぜなら、ふと目に飛び込んできた情報が、胸にぐさりと突き刺さって苦痛のもとになることがあるからです。
ネットのコンテンツを見てもいいかどうかの選択基準は、「見ても心が傷つかない内容であること」。
私は、ネット上で見るものは「無害(見ても傷つかない)」と分かっているもの、
例えば特定の投稿者による動画やブログ、サイトなどにある程度絞っていました。
ネットの海の中には、人の認知を歪ませるような意見もはびこっています。
こういった声に飲まれると、うつ病が悪化していきます。
例えば、「うつは甘えだ」などの無知な意見が書かれている場もあります。いいえ、うつは病気です。
そういう場に出くわすと心へのストレスが半端ないので、足を踏み入れないよう気をつけましょう。
自分の心を守れるのは自分だけです。
心を休ませると、心の免疫力がつく
上の3点をしっかり実践していると、
意外と自分で気分をコントロールできることに気がついてきます。
「うつ」のときは、病気の力が「憂うつな気分」にさせているのですが、
次第にその病気の力に抗うことができるようになります。
心を穏やかに、ストレスを与えないように大切に扱っていると、
心が本来持っている「免疫力」が戻ってくるのです。
そして、「行動の選び方次第で、気分を良くすることも、悪くすることもできる」ということが分かってきます。
そして、ひとつひとつの行動を選ぶことへの「責任感」が生まれます。
その結果、自然と行動の選び方に慎重になり、
自分の心の健康のために最適な選択肢を取ろうとするようになります。
「自分を幸せな状態に保ってあげよう」という気になるのです。
こうするとどうなるかと言うと、
驚くことに、実際に「幸福感」が育ってきます。
このように、
「誰かによって棚ぼた的にもたらされる幸せ」ではなく、
「自分で築き上げる幸福感」は、容易には崩れ去りません。
この「確固たる幸福感」を築き上げるのが、うつの治療の最終目標です。
▼自分を許すレッスン

▼眠れぬ夜の過ごし方

